人生を豊かにする音楽・居酒屋・旅にまつわる気ままなブログ

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サンフランシスコ交響楽団100周年

 

一週間にわたるサンフランシスコでの仕事も無事終わり、最後の夜は今 シーズン100周年を迎えたサンフランシスコ交響楽団の定期演奏会にデービス・シンフォニー・ホールに出かけた。今宵はマイケル・ティルソン・トーマス(MTT)の指揮でマーラー「花の章」、シュニトケのヴァイオリン協奏曲第4番(ソロはコンサート・マスターの アレクサンダー・バランチック)、そしてベートーヴェン「田園」。1995 年から音楽監督を務めるMTTと同オケとの絆は根強く地元でも大人気でパトロンも多い。

「花の章」は後に交響曲第1番「巨人」となる作品に初演当時含まれていた楽章。私も偶然10月に演奏することになっている。なんとしなやかな演奏だろうか。MTTはマーラー指揮者としても高く評価されているだけあって隙がないし余裕と見通しのよさを感じる。トランペット・ソロはバランスといい音色といい完璧だろう。

続くシュニトケ(1934-1998/旧ソ連のドイツ・ユダヤ系作曲家)は初めて聴く作品。いきなり学校の授業開始の鐘(?)と同じ旋律から始まる。マリンバ、ビブラフォン、ピアノ、チェレスタ、ハープシコードなど多彩なパーカッション・セクション9名が活躍するのも面白い。ソロ・ヴァイオリンはG線をペグで下げたり上げたりする奏法も見物だったし、サブのヴァイオリン・ソロが客席から演奏するなど様々な演奏上の趣向がこらされていてCDではこの面白さは味わえないだろう。バランチックとMTTのコンビでは2003年の再演ということもあり勝手知ったる安定感がある演奏でMTTの統括力が光った。終演後は鳴り止まない拍手で包まれていた。

休憩後の「田園」はオケ編成を減らし(弦は上から11+9+8+6+4人で倍管なし)室内楽的な響きを指向していた。第1楽章ではヴァイオリンやチェロを所々ソロにして響きを薄くするなどの工夫もあったが、総じて馴染めなかったというのが正直な感想。MTTなら内声部でもっと悪戯したり弾力性のある変化をつけたりできたはずなのに現代奏法において純粋な音だけで勝負しすぎていたのでは。マーラーであれだけの共感を創り上げるオケとは別人だった。一言でいえばBGMのように耳に届くだけで、汗をかかない演奏と表現したらよいだろうか。

ロビーでは100周年を記念した展示がいろいろあった。そのなかで先代のヨーゼフ・クリップスから音楽監督に指名された当時35歳の小澤征爾との7年間のパネルがあった。オザワは頑張ってたんだなあ、日本人の誇り・・・明日、帰国します。あっ、ちなみに下右の写真はMTTの指揮棒と「田園」のスコアです。

2012年2月のバレエとコンサートとオペラ・・・

2月に入ってからここ3週間続けて金曜日はバレエ、コンサート、そしてオペラに出かけ雑多な日常から離れ心底リフレッシュした。まず2月3日はボリショイ・バレエによるチャイコフスキー「白鳥の湖」全幕。東京文化会館のロビーで華やかなレセプションも開催された。本場のバレエは本当に美味しいビールのようにコクがあってキレがいい。その幻想的な舞台はアクセンチュア社日本法人50周年を飾る素晴らしいイベントとなった。

2月10日はサントリーホールで、フランソア=グザヴィエ・ロト指揮南西ドイツ放送交響楽団バーデン=バーデン&フライブルグによる東芝グランドコンサート2012。東芝による海外オーケストラ招聘も今年で31回目。冒頭のヴェーベルンの「夏の風の中で」は透明感に満ち溢れて、このオケのフレキシビリティーの高さを示してくれた。続くシベリウスのヴァイオリン協奏曲は2007年第13回チャイコフスキー国際コンクール優勝の神尾真由子が圧巻。ここまで完璧な演奏は聴いたことがない。彼女はついつい熱くなる性格のようだが、この日は公演初日という条件の中、しっかりコントロールを忘れず理性と野性が見事に調和した。アンコールがあるかと思いきやそのまま舞台袖に引っ込んだのはちょっと残念。当日のメインはベートーヴェンの交響曲第3番「エロイカ」。ナポレオン所縁の「エロイカ」をフランス人シェフがドイツ・オケを料理するいう意味での興味はあったものの、今さら「エロイカ」?というのが正直な期待感だった。しかし演奏が始まるや、グイッと引きこまれた・・・現代楽器を駆使したピリオド奏法ではないか! エリオット・がーディナーの愛弟子であった指揮者ロトならではの真骨頂。そういえばロトがサン・サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」をフランスの古楽器室内オーケストラとピリオド奏法で演奏したCDを買ってたけどまだ聴いてなかったことを思い出した。このオケはドイツ的いぶし銀の響きとは無関係でユニバーサルな音質が特長。マーラーなんかも面白いだろう。

2月17日はブラザー工業協賛の二期会オペラ公演を東京文化会館で。演目はヴェルディの「ナブッコ」。鬼才ダニエレ・アバド(指揮者クラウディオ・アバドの息子)の演出はイタリアの伝統と革新の融合が成功した。バビロン王国の舞台設定を現代の黒いスーツ姿に置き換えたのは2001年にウィーン国立歌劇場で観た同作品(準・メルクル指揮)を思い出させる。私が注目したのは若干24歳のイケメン指揮者、アンドレア・バッティストーニ。譜面台にスコアも置かず全幕暗譜で大きく両腕を動かすダイナミックな指揮。これからり活躍が楽しみで注目したい。オケ・ピットでは東京フィルハーモニー交響楽団も見事に反応していた。

これで当分コンサート通いもない。次回は4月に東京の春・オペラの森かな。おっと、その前に自分が出演するコンサートがみないみらいホールで3月17日だ。

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2011年の第九

久々の「音楽ナンダンカンダ」の投稿です。今日は下野竜也指揮読売日本交響楽団の「第九」を聴きにサントリーホールに出かけた。会社が六本木の東京ミッドタウンなので師走の忙しい仕事の合間をぬって何とか間にあった。今宵はP席、つまり舞台の真後ろで下野さんの情熱溢れる棒が丸見えの席に陣取る。

下野さんは内声部(特にセコバイとビオラ)を丁寧に謳う。NHK番組「ディープピープル」で下野さんがコパケンに突っ込みを入れた第1楽章練習番号Sはやはりタメを置かず直線で流れを創る。第2楽章は全ての繰り返しを行いリズム感を重視し、Prestoは安定した二つ振り。第3楽章は指定の♩=60を大きな4つ振りで軽やかさを尊重。ご本人がプログラムにも寄稿していた練習番号Bのセコバイのppに拘りを見せる。終楽章の”vor Gott(神よ)”ではブライトコップ新版どうりにオケだけ見事にディミニュエンド・・・これは渋いぞ。圧巻は最後のMaestoso、本気で♩=60で一気に駆け抜け、思わず席から転げ落ちそうになった。

ここまで新ブライトコップ版に忠実に演奏したのは内藤彰や堤俊作も敵わない。合唱の新国立劇場合唱団も少数精鋭で言葉の輪郭が明確で気持ちよい。下野さんなら何かやってくれるだろうと思っていたけど予想をはるかに上回る大感動。ぶらぼー!!! 下野さんの「第九」は今年の震災をはじめとする悲しい出来事を乗り越え明日の希望への道のりを示してくれたような日本人の想いの籠った演奏となった。日本の師走の風物詩でもある「第九」に一石を投じた秀演である。24日の土曜日なら時間あるのでもう一度聴いてみたいくらいだ。

実は12月23日に人気を二分する注目株の金聖響が神奈川フィルを振る「第九」のチケットも買ってたんだけど当日仕事のゴルフで已む無く会社の同僚に譲ってしまった。後はミスターSが振るN響なんだけど仕事で行けそうもない。。。

 
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ドゥダメル&ロス・フィルの蜜月

飛行機の都合でアリゾナ州フェニックスからロスに移動して一泊。夜に地元ロサンジェルス・フィルハーモニックの定期演奏会があったのでチケットを手に入れてウォルト・ディズニー・コンサート・ホールに出かけた。今宵は、ジョン・アダムスの「Short Ride in a Fast Machine」、メキシコの作曲家エンリコ・チャペラの電子チェロのための協奏曲「MAGNETAR」世界初演、そしてプロコフィエフの交響曲第5番というプログラム。指揮はもちろん地元で大人気の若手注目株、グスターボ・ドゥダメル。現代作品が前半2曲並んでいる割に会場はほぼ満席、ドゥダメルの人気が窺える。ウォルト・ディズニー・コンサート・ホールはエントランスやロビーがゆったりした空間で形成されてモダンな造り。舞台を取り囲む形で配置された客席はどこからも眺望しやすく、木製を基調としたデザイン、特に舞台中央に配備されたたパイプオルガンが美しい。ディズニー家が相当に資金を費やしたのも分かる。1曲目のアダムスは現代アメリカを代表する作曲家。鋭いリズムが様々に変化する約4分の作品に対して、ドゥダメルは正確さを基調とした棒さばきでシャープな音楽の要素をリードした。続くチェロ協奏曲は世界初演。ここでいう電子チェロとは、YAMAHAのサイレント・チェロをPCと接続し、ロックのエレキ・ギターのように音色を七変化させる作品。ソロは来日したこともあるイケメン・チェリストのヨハネス・モーザー。日本では当たり前のようなYAMAHAのサイレント・チェロも米国では物珍しいらしい。演奏前にすこし解説があった。そもそも日本の小さな住宅で音量を気にせずにチェロを楽しむために開発された楽器だけに、アメリカのような住宅事情には必要なかったのかも・・・ この作品は予想外に楽しめた。冒頭は弦楽器セクションが楽器を使わず、両手をこすり合わせて音をだし、それから両手を拍手みたいに鳴らし電子チェロの伴奏をする。途中、完全にヘビメタかと思うようなチェロの使い方もあり、多種多様。難いこと言わずに身体が自然に反応したって感じの作品だった。終わったらブラボーと口笛の嵐。ロック・コンサートか?? これもドゥダメルの人気なのだろう。休憩を挟んでのプロコの5番がまた素晴らしかった。ドゥダメルがプロコのスコアを完全掌握し、オケの緻密なアンサンブル力を背景にガッツリした造形力と巧みな色彩感で勝負した演奏。ロス・フィルってこんなに上手かったっけ? 土地柄かチャイニーズ系の団員が多いこのオケは誰かが出しゃばるのではなく、オケ全体で広い音域と音色を紡ぎだすひとつの楽器のように機能していたのがとても印象的。見直しました、ロス・フィル!!!  ドゥダメルも貫禄が付いてきて振り方がどことなくアバドに似てきたと感じるのは私だろだろうか・・・終演後、ギフト・ショップでTシャツ、ロス・フィル指揮棒、サイン会に備えてモーザーのCDをお土産に。ロビーでモーザーのサイン会では写真もバッチリです。

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エッシェンバッハ&ウィーン・フィル来日公演


香港出張が1日短くなったので、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演に予定どおり行けたのは幸運。最初は諦めて誰かに譲ろうかとまで悩んでいたのだが。。。今年はクリストフ・エッシェンバッハの指揮で私の大好物のブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」をメインディッシュに前半はラン・ランのソロで今年生誕200周年のリストのピアノ協奏曲第1番という豪華モノ。来週にスクロヴァチェフスキーが来日して同「ロマンティック」の公演があるが、米国出張なので今回は意地でも行きたかったのです。

来日初日公演ということもあり、かつこの作品に限り若手楽員を登用したためか、前半のリストは少しウィーン・フィルも探り探りのところがあり硬さがあったが、ラン・ランのピアノは天性の音楽性とたぐいまれないテクニックでオケと対話し対決する動的な演奏が魅力。エッシェンバッハ自身が元ピアニストということもありサポートは万全。みなとみらいホールのスタインウェイはすこし音が硬い印象を持ったが、アンコールでラン・センが演奏したリストとショパンの小品でスターダストのように静かに輝く音色には息をのんだ。

後半のブルックナーは完璧!!! これまで数多くの同作品の演奏会に足を運んだが人生ベストの体験だった。冒頭から相当ゆったりしたテンポを頑固に堅持。そこにウィーン・フィルならでは町の庁舎から一日の始まりを告げるウィンナ・ホルン。ああっ・・・こんな美しいホルン聴いたことない。その後静かな高揚を経て第1ヴァイオリンが練習番号A前の主旋律を楽譜指定より1オクターヴ上げて演奏、なんとニクイ演出か! (これはカラヤン&ベルリン・フィルもやっている。もともと改訂版の記述がこうなっていて古くはフルトヴェングラーやマタチッチも採用していた。) その後もどっしりとしたテンポ感に揺るぎはない。大きな造形を示すエッシェンバッハの棒にウィーン・フィルが深い理解と共感を示し、フレーズ毎に単調にならず細かいニュアンスがふんだんに盛り込まれる。私は北ドイツ放送交響楽団を指揮したエッシェンバッハの同作品のCDを持っているが、アプローチは同じでもひとつひとつの表現力はウィーン・フィルには敵わない。ノヴァーク版による演奏は第3楽章のトリオでも見事なハーモニーの深みを出す。終楽章もどっしりとしたテンポを貫きながら一切間延びせずエネルギーを凝縮。やはり伝統が成せる技なのだろうか。終演後のサイン会でエッシェンバッハとラン・ランのサインをもらう。ラン・ランのサイン会には数百名ならんでたと思う。エッシェンバッハのサインは昨年春にサンフランシスコ交響楽団に客演時ももらったけど、今宵の感動を直接伝えたくてサイン会に並んだ。エッシェンバッハに前述のヴァイオリン・パートの記譜と違う演奏を指摘すると、よく分かってくれた!と御満悦でした。

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軽井沢国際音楽祭2011

今年も軽井沢国際音楽祭に来た。日曜日のフェスティバル・オーケストラ・コンサートに出演する。金曜日は軽井沢大賀ホールで「音楽家の食卓」と題した室内楽コンサート。一流のシェフたちが繰り広げる演奏は圧巻。美食評論家の山本益博さんのナビケートも楽しかった。山本さんによると、日本で魚をさばくと全て別々に食するが、フランスでは牛一頭をさばいてバラバラにした後ソースになった部位と塊で食べる部位が再びひとつの皿に集結するとのこと。ブラームスのピアノ五重奏曲を聴いて味の違うパーツとパーツが複雑に絡み合って出来る大きな宇宙と似ているなぁと感じる。肉分化と魚分化の違いか・・・ コンサートの後はお決まりの会食会。軽井沢駅近くの居酒屋で盛り上がる。

下の飲み会写真の左は作曲家/ピアニストの野平一郎さんとN響ヴァイオリンの森田昌弘さん。真ん中はオーケストラ・アンサンブル金沢首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタさんと東京交響楽団首席クラリネット奏者のエマニュエル・ヌヴーさん、右は音楽監督の横川晴児さんと美食評論家の山本益博さん。本当に楽しい軽井沢の夜でした。

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“雑草”指揮者、佐渡裕の半生記

今年5月にベルリン・フィルの定期演奏会にデビューした指揮者、佐渡裕氏の自伝的エッセイ2冊、「僕はいかにして指揮者になったか」(新潮文庫)と「僕が大人になったら」(PHP文庫)を夏休みに読んだ。「絶対にオーケストラを振ったるねん・・・」という熱い夢に邁進しつづけた男の半生記。世界のオザワとレナード・バーンスタインとの運命的な出会い。人生って想い続けて努力すれば夢は必ず叶うということが実証されて勇気をもらえる。関西弁の語り口によるエピソードが文章を柔らかく読みやすくしてくれている。特別に指揮法の授業を受けたことはなく、僕でも持っている斎藤秀雄の「指揮法」の教本は、出てくる言葉が難しく辟易して「何やこれ」って投げだしたらしい。文中に出てくる最初の指揮の師匠の岡田先生とは岡田司さんのことだろうか。岡田司さんとなら私も大阪勤務時代にアンサンブル・モーツァルティアーナで数年ご一緒した。佐渡裕とは全く対照的な”静“の指揮をなさる素晴らしい指揮者だ。また学生時代のエジンバラのフェスティバルで私の九大フィル先輩で現在名古屋フィルでクラリネットを吹いている井上京さんと一緒だったという話題でも佐渡さんが近くなってた気がした。佐渡さんはクラシック音楽とワインは似ていると表現する。「何かと表面的な儀式のようなところばかり見えて、実際の味には触れたことがなかったりする。」と。そのために「題名のない音楽会」の司会を務めたり「サントリー一万人の第九」を通じて分かりやすくクラシック音楽普及に力を注いでいるのだろう。ビジネスにも通じる語り口も見つけた。ひとつは、「指揮者とは楽団員の心をMUSTからWANTにか変えるための存在」。そのためにはある事を確信を持って人に伝える勇気が必要なのだと。もうひとつは、「自信とはありのままの自分を信じられること」だと説いている。英語やドイツ語、フランス語、イタリア語で苦労した話も面白い。バーンスタインとオザワからも語学をちゃんと勉強しないといけませんと叱られたらしい。言葉が全てではないけれど、ビジネスの世界も同じだ。自らを”雑草”と揶揄しながらも今やヨーロッパでは大人気者になった佐渡さんは世界一のアマチュア精神を持った指揮者だと思う。それにしてもTVを観る度に、佐渡さんの顔って”まいう~”の石ちゃんに似ていると思うのは僕だけだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

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夏の早朝のメシアン

先日タワーレコード横浜モアーズ店のお会計に並んでいたらレジ後ろの棚に置いてある”メシアン”の文字に目が留まった。それは児玉桃さんのピアノによるメシアン「鳥のカタログ」全曲の3枚組CDだった。スタッフの方に尋ねると誰かの予約ではなく再陳列のためにここに置いてあるとのこと。思わず、「それじゃ買います!」。児玉桃さんは今やメシアン作品のピアノ演奏の第一人者。彼女の知的で色彩豊かな音楽はメシアンの難易度の高い音符の連鎖と透明な響きを見事にバランスしてコントロールしている。フランスの現代作曲家オリヴィエ・メシアンは鳥類学者としても知られ鳥の歌声を採集していた。来日時に軽井沢で採集された鳥たちの歌を基に「七つの俳諧」の第6曲「軽井沢の鳥たち」が作曲されている。僕は夏の早朝の爽やかな時間にこの作品を聴く。多彩なメシアンの自然と音楽の不思議な調和が心地よい。これにモーニング・コーヒーで落ち着いた朝を過ごすとサイコーの一日を迎えられそう。SACDで音もよく、豪華な化粧ボックス仕上げで解説書も充実している。
メシアン:「鳥のカタログ」(全曲)
第1巻 1.キバシガラス 2.キガシラコウライウグイス 3.イソヒヨドリ
第2巻 4.カオグロヒタキ
第3巻 5.モリフクロウ 6.モリヒバリ
第4巻 7.ヨーロッパヨシキリ
第5巻 8.ヒメコウテンシ 9.ヨーロッパウグイス
第6巻 10.コシジロイソヒヨドリ
第7巻 11.ノリス12.クロサバクヒタキ 13.ダイシャクシギ

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カンタさんの無伴奏チェロ組曲

今年も夏の恒例、軽井沢国際音楽祭のフェスティバル・オーケストラ・コンサートに出演させて頂く。今年は2年振りにオーケストラ・アンサンブル金沢の首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタさんがチェロ・パートを率いる。過去何度も同音楽祭でお会いしているが、ユーモアに満ちて温かい人柄と日本人には出せない深みのある音色に一発で大ファンになった。

そのカンタさんが、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲全6曲のCDをリリースした。2009年5月に石川県立音楽堂での1日6曲全曲の3時間コンサートののち、同年7月と12月に録音されている。第1番のプレリュードから、懐かしいカンタさんの音だ。1900年製作のステファノ・スカランペラーがガンガン鳴る。最近ではレガートな古楽器奏法が流行の優しい演奏が多い同作品だが、カンタさんは往年のチェロの神様、パブロ・カザルスを彷彿とさせるような頑固で冒頓とした解釈が聴きもの。このダイナミズムはスロヴァキア生まれの恵まれた体格から生み出されるもので、そんじょそこらの日本人チェリストでは真似できない。カンタさんはエチュードをさらうのが好きだとおっしゃってた。楽器演奏の基本中の基本だからね。でもカンタさんが弾くと退屈な運指の練習曲が素敵な演奏会ピースの作品に七変化してしまう。それくらいゴージャスな演奏なんだ。今年も夏の軽井沢での再会を心待ちにしている。下は2009年の軽井沢国際音楽祭でのスナップ写真。                                       

  

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邦人指揮者の雄、小澤征爾と佐渡裕

先月発売されたCDの中でも、小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラによるベルリオーズ「幻想交響曲」と、佐渡裕&ベルリン・フィルによるショスタコーヴィッチ「革命」は日本を代表する二人の指揮者による注目の演奏だけにこのブログで取り上げないわけにはいかないだろう。

 まず、佐渡裕のベルリン・フィル・デビューLIVE。題名のない音楽会などのTV番組でもその映像が放映されたのでご存知の方も多いはず。佐渡はバーンスタイン譲りのデッカイ音楽造形を重視し、とてもジューシーな演奏が繰り広げられる。特にフィナーレのド迫力は歌舞伎の大見得のごとし。レコード芸術誌で辛口評論家の宇野巧芳氏が称賛しているのを読んで逆に懐疑的になったのだが。ベルリン・フィルの名手達が何とか佐渡の想いを汲み取ろうという姿勢が伝わってくるが、佐渡自身からもっと棒ではっきり解釈を伝えるべきではないか。CDジャッケット写真でも判るようにスコアを捲りながらの指揮なのだから、ベルリン・フィルの実力に頼りきらず、密度の高いタクトを見せてほしかったところだ。 

一方の小澤の奇跡のNYライブ2と題したCDはブラームス交響曲第1番に続くリリース。過去の小澤の同作品録音とタイミングでも大差のないユニバーサルな演奏。私は2007年に松本で同コンビによる「幻想交響曲」の生演奏に接した。上品でありながら、食べ頃の生レバ刺しのような劇的な演奏は今でも忘れない。それと比べると今回のカーネギーホールでの演奏はちょっと大人しく、かつ薄っぺらになったと感じる。長期療養からの復活だけに、安全性を優先したのだろうか。それに2007年の演奏とはオケのメンバーに相当の交代があり特に管セクションは2007年に軍配を上げる。昨年は巨匠ミュンシュによる同作品の超爆演ライブが発売されてからはどれを聴いても分が悪い。 

何はともあれ、佐渡裕も小学生時代からの夢が叶ったわけだし、世界のオザワも復帰できて、全てめでたし、めでたし。

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